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心理学の知識

フォーカシング|ユージン・ジェンドリン|公認心理師試験

フォーカシング|ユージン・ジェンドリン(1926~2017)|公認心理師試験

フォーカシング1 focusing 
ユージン・ジェンドリン(1926~2017)

◇フォーカシング
焦点づけ・ピント合わせ focus(s)

まず、気がかりなことを思い浮かべて、それを頭がどう理解しているかでは無しに、
身体の中で感じられている感覚に注意を向け、問題を全部つつみ込んでいる丸ごと、
全体としての一つの大きな気分を感じるようにし、
経験そのものに触れる事によって、
そこから自然に示されてくる(感じる)意味に気づき、
新しい力や方向性を得るようにアプローチして行く心理療法。

◆フォーカシングは心理療法のひとつであり、
自己理解と体験学習を促すための方法。

1960年代、アメリカのユージン・ジェンドリンによって開発された。

「体験学習」を具体的に言えば、人間の内的変容である。

内的変容とは・・・
外界の出来事にとどまることなく内面深く物事を感じ取ることにより、
問題解決を生み出す現象を意味する。

【具体的な体験段階】

1:外界の出来事にふれる

2:外界の出来事+自分についてふれる

3:外界の出来事+個人的反応についてふれる

4:反応的感情+内的感情を表現する

5:自己描写+問題提起をする

6:問題提起+答えを見出す

7:6以上の答えに対し確信的であり拡張的である

・フォーカシングの特徴は、以上の過程のうち、
一つの問題についての身体感覚に注目するところにある。

漠然としているが、明確に感じられる身体感覚
「何かの感じ」(フェルト・センス felt sense )に、
いろいろ問い合わせると、新たな問題が見え、その問題についての身体感覚から、
また別の問題が問題となって行き、問題の変容の間に関連性がみえる。

また個人にとって、より中核的だと思われる問題の出現によって身体感覚から、
OKというサイン(フェルト・シフト felt shift )が出てくる。

このような身体感覚に注目し、これを利用して個人の心の「問題」について、
何らかの変容を図るのが、フォーカシングである。

これは、外界の出来事だけを話すクライエントよりも、
「感じ」「感覚」を話すクライエントの方が改善しやすい、
という、ジェンドリンの発見に基づいている。

◇フェルト・センス(felt senses)

●定義:フェルト・センスは意味を含んだ身体感覚

からだの中心部:お腹・胃・胸・喉のあたりで感じますが、
からだの他の部分でも感じられます。

あなたがからだの内部に注意を向ける時、すでにある場合もありますし、
時にはそれが形をなすための条件作りが必要となることもあります。

からだの中でフェルト・センスを感じて、
それが生活や人生のどんなことについての感じかを尋ねることから始めたり、
生活や人生上の問題をひとつ選んでそれについてのフェルト・センスをもたらす為に、
あなたのからだに問いかけることから始めたりできます。

フェルト・センスはしばしば感情を含んでいますが感情とは違います。
フェルト・センスはしばしば漠然とした、微妙で説明しにくいものです。
とらえどころのない、つかのまのものです。
「まだ、あなたが言葉にしていないもっと多くの何か」を含んでいます。
※ただ身体的というだけにとどまるようなものではありません。

【フォーカシングの方法】

(A) 間(クリアリングスペース)を置く

・日常的な心配事に入り込まず、それについては脇に置くようにする。
そして、「どうしていますか」
「何か気になっていることがありますか」と、自分で自分に問いかけてみる。

(B) (A)で列挙された気になる事の中からひとつを選ぶ

・気がかりなことの中から一つ選ぶ。
これは具体的な事柄の方が良い(例:母が口うるさいなど)

(C) フェルト・センス felt sense をつかむ

・胸部や腹部にある、まだ明確でない意味を含んだ感覚をつかむ
(例:さみしいような、なんとなく胸がもやもやする・・・という感じ)

(D) 取っ手(カバン等)にハンドルネームを付ける

・フェルト・センス(もやもやする等)に、
それにぴったりくる言葉やイメージをつける。
(例:胸を何かで圧迫される感じに「もやもや君」とか)

(E) 取っ手の確認

・取っ手を確認し、言葉やイメージを身体の中に響かせ、その見出しを使うと
フェルト・センスの全体が現れるかどうかやってみる。

(F) 問いかけ:問いかけを行う

・このことの何が~みたいな感じなのか。
何があれば(起これば)いいのだろう。
この取っ手が一番ひどくなったら、どうなるのだろう。

◇ここで問題の感じ方に変化を起こして開放感を得る。
そして解放感とともに気づきを待つ(フェルト・シフト)。

ここでフェルトシフトが起きない場合は、フェルト・センスに戻り、
2ラウンド・フォーカシング、3ラウンド・フォーカシングを行う。

(G) 受容

・自分の気づきや気持ちを優しく肯定的に扱うこと。
傾聴技法が非常に効果的です。

● 以上のような体験過程を経て、
内的変容に至る心理療法をフォーカシングという。

by ユージン・ジェンドリン Eugene T. Gendlin(1926~2017)
※アメリカの哲学者・臨床心理学者で、体験過程(Experiencing)理論を提唱し、
フォーカシング(Focusing)を創始した人物。

フォーカシング2 focusing ユージン・ジェンドリン

◇フォーカシング、焦点づけ focus(s)ing

1、フォーカシングの準備

まず、フォーカシングにどれくらい時間が取れるかを予測・確認します。

30分くらい取れれば理想的ですが、10分でも十分効果があります。
10分のフォーカシングでは後半2分程度が終了のために使われます。
30分であれば5分くらいです。

寒くなったりしないように、場の温度を調整するか上着を着て調整。
フォーカシングの内容をメモするための筆記用具準備等。

※時間はあくまでも目安のですので、
フォーカサー(セラピスト)の感覚で調整して構いません。

2、問題を思う

フォーカシングの入り方は2つあります。

A:問題を決めて始める方法で。
B:漠然と身体からわき上がるフェルトセンスを待つ方法。

この場合、今抱えている問題が対象になり、
意識していないものになることもあります。

ここでは、問題を決めて始める方法を書きます。
深呼吸を2回して、問題を思います。

深呼吸2回というのは、
身体への条件付けですので別の方法でも構いません。

深呼吸2回がフォーカシングのスタートだと身体に思いこませれば、
いつでも簡単にフォーカシングに入ることができるようになります。

前回中断したフォーカシングの続きをする時も、
中断した問題を思ってそこから始めることができます。

※毎回同じように入ることで、状態を作りやすくなります。
(アンカー又は、ルーティーンなどと呼びます)

3、体の内側に注意を向ける

自分の注意を身体の内側に向けます。
多くの場合、フェルトセンスは胃や、みぞおち、胸、のどなど、
身体の中心線に沿って現れることが多いのが特徴です。
もちろん、他の場所で感じるケースもあります。

上下に往復してフェルトセンスがないか探してみます。
それでも見つからない場合は、
身体の中心線から離れたところも探していきます。

瞑想慣れ(ヨガなど慣れ親しんでいる方々)している人の場合、
身体感覚がなくなってしまうとフォーカシングになりませんので、
その場合は目を開けてみたり、身体を揺らしたしたりしながら、
「身体の感覚を維持」すると良いかもしれません。

4、気になる感じを見つける

フェルトセンスが見つかったら、他にもないか探してみます。
いくつも出てくる場合もありますし、一つしか出てこない場合もあります。
複数出てきた場合は、同時に扱うべきかどうか、体に聞きます(傾聴)。

扱うべきでない場合や、多すぎる場合は、
クリアリング・スペースの方法で対象のフェルトセンスを絞ります。

5、見つかった感じを客観的に見つめる

見つかったフェルトセンスを客観的に認めるために、
「こんにちは」と挨拶をします。

フェルトセンスは、あなたの中に、そう感じる部分があるということです。
挨拶をすることは、存在を認めることです。

6、その感じを比べる

挨拶をしたフェルトセンスについて、名前を付けます。
名前を付けたら、その名前を身体に戻して確認します。

つまり、そのフェルトセンスに、ハンドルネーム
「あなたを○○って呼んで良いかな?」という風です。

リアクションとしては、

・しっくりする感じやピッタリする感じ。
・一部分がしっくりする感じ。
・しっくりいかない。

など・・・いくつかあります。

しっくりいく感じがするまで、ぴったりの名前を探します。

この名前がしっくりいかないと、
うまくコミュニケーションが取れない場合が多いので、
面倒がらずに最適な名前(ハンドルネーム)をつけましょう。

7、ゆっくりと付き合う

しっくりいく名前が見つかったら、
その隣に座ってみます(イメージです)。

相手(フェルトセンス)が話をしてくるかどうか少し待ってみます。

話しかけてこなければ、
「○○さん(つけた名前)、こんにちは」と言ってみます。

8、聞いてみる

フェルトセンス側から見るとフォーカサーは外から近づいてくるものです。
こちらと同じ感覚をフェルトセンスが持っているとは限らないので聞いてみます。

フェルトセンスと仲良しになれると、
この後のフォーカシングがとてもスムーズに進みます。

9、質問する

○○について質問する段階です。

例えばフェルトセンスが怖がっているようであれば、
「どうして怖がっているの?」
「怖がっている理由は何かな?」と聞いてみます。

いろいろと話をした(コミュニケーションが成立した)後に、
「それには何が必要なのかな?」と傾聴したあとに、尋ねてみます。

そして、『何もかも大丈夫』になったら、
「どんな感じか教えて欲しい」と身体(センス)に頼んでみます。

フェルトセンスとフォーカサーが協力して問題を理解していきます。

10、終わりにする

問題についてお互いの理解が得られれば、終了になります。

セッションを終わりにする時はフェルトセンスを尊重して
「あと1,2分で終わりにしても大丈夫かな?
それとももっと私に伝えたいことがあるかな?」と聞いてみます。

ここで、一気にセッションが進む可能性もあります。

終わりにする時に、まだ解決する問題があると言うことであれば、
次回また戻ってくることをフェルトセンスに伝えます。

それには、「また戻ってくるからね」と伝えるだけで大丈夫です。

11、最後に

「私につきあってくれた部分と私の身体に感謝します」と、
感謝の気持ちを伝えます。

この手順は今後のフォーカシングをスムーズに進めるために必要なことです。

以上のような体験過程を経て、
内的変容に至る心理療法がフォーカシングです。

by ユージン・ジェンドリン Eugene T. Gendlin(1926~)
※アメリカの哲学者・臨床心理学者で、体験過程(Experiencing)理論を提唱し、
フォーカシング(Focusing)を創始した人物。

体験過程 experiencing

【体験過程】

「ある特定の内的行為」とは自分の内部で感じられる気持ち(体験)との関わり方。
体験(experience):人間が今この瞬間に経験している感情や気持ち。
体験は常に移り変わっていく(ing)
⇒(experience)+(ing)=(experiencing)体験過程

・人間がいま、この瞬間に経験している感情や気持ち。
その体験され、感じられている何らかの流れを体験過程という。
それは、知的に考えるとか言語で表現できるようなものではない。

experiencing という語におけるingは、
「体験」(experience)を一つの過程と考えていることを示す。

体験過程という用語は、
過程という枠組みみよって見られた全ての「体験」を指している。

心理学において「体験」という言葉は、それがどこで用いられようと、
具体的な心理学的事象を意味している。
体験過程は、具体的にまさに進行している種々の事柄の一過程である。

◇体験過程は、一つの感じられた過程( a felt process )を意味する。

その意味は内部的に感覚され、
身体的に感じられた諸事象ということでもあり、
人格、あるいは心理学的事象を構成している具体的な「もの」は、
この身体的に感覚され、感じられたことの流れである。

それは、具体的、身体的な感情の過程であり、
それは心理学的および人格の現象に関する基本を構成している。

体験過程スケール 評価基準早見表

1:事実をたんたんと述べる。「私」が入らない。
2:「私」が入り感情が入らない。
3:「私が」と「感情」が入る→すっきりした
4:「私」が、人の感情を察したり配慮したりする。
5:人から受ける不快は他に自分に原因があるのかなぁ~と思う(視野の拡大)
6:「事実対する感情」ではないことに気づく
7:気づきが応用されていく・・・自分自身の嫌な部分を別の人に映して嫌う=気づく

☆1~3は、気づきが得られない状態=フォーカシングで活用UP
☆フォーカシングの適用:健常者の自己理解
⇒ 1~3のクライエントに特に有効→(4~7へ徐々に導く)

心理療法とは

・個人が概念と言うものを用いながらも、それをただ単に理論的にのみ用いては、
決して得られないような、何かそれ以上のものを達成し得るところの一つの方法である。

その本質を一言でいうならば、人間の感情と人間が用いる概念との間に存在する、
種々の関係の新しい認識である。

・体験過程は、この心理療法過程を理解するのに役立つ概念として、
アメリカの臨床心理学者
ユージン・ジェンドリン(1926~2017)が1955年に提唱した。

【6つの特質】

(1) 感情の一つの過程であり、知的理解とは区別される。

体験過程とは、感じられる(feel)ものであって、単に思考されたり、知られたり、
あるいは言語的に表現されるようなものではない。

(2) 今、この瞬間において、おきる一つの過程である。

今、ここに感じることに他ならない。

(3) 個人による現象的場における一つの感じられた素材。

個人による現象的場における一つの感じられた素材として、
直接に問い合わせることができ、指摘できる。
体験過程は、自らの内面に目を向け、
この流れという一つの素材を直接指示し、言及出来るものである。

(4) それは言葉以前に感じられるもの。

個人は自らの現象的場における一つの素材として、
それに直接指示し、それに導かれて概念を形成する。

(5) 潜在的な暗黙の豊かな意味をもっている。

暗黙に含まれている意味は、単に感じられるだけのものであり、
後に至るまで明示されないかもしれない。
だが、この暗に含まれた意味が足がかりとなって概念的明瞭化が可能になる。

(6) 前概念的、有機体的な過程であり、身体を通して感じられるものである。

ある瞬間に体験しつつあることがもつ多くの暗黙の意味・含蓄は、
かつて一度概念化されたものが抑圧されたというものではなく、
これらの意味は、前概念的なもの。
気づかれてはいるが、まだ分化されていないものと考える。

◇体験過程の理論は、カウンセリング・心理療法・人格論や創造性などにも影響を与え、
また、カウンセリング技法の精密化をもたらした。

【実習の手順】

●ジェンドリンによる、
「技法としてのフォーカシング」をショートフォームという。

1)クリアリング

2)具体的には、まず胸の奥や腹の底など身体の中心部分にぼんやりと注意を向けながら、
何かの気がかりにまつわる感じ(フェルト・センス)が感じられるのを、受容的な態度で待つ。

3)そのフェルト・センスにぴったりな言葉(ハンドル)を探し、
見つかれば、その言葉がフェルト・センスにぴったりかどうかを突きあわせて感じてみる。

4)違っているようであれば、再びぴったりくる言葉を探し、
もう一度、フェルトセンスと照合してみるという過程を繰り返す。

フェルト・センスとハンドルがぴったりであれば、フェルト・シフトと呼ばれる、
ぴったりだという感覚と解放感が得られることがある。

5)さらにフォーカシングを続ける場合、今度はフェルト・センスに対して、
「何がそんなに~なのか」「その感じは私の生活の何と関係があるのだろうか」などの質問をし、
フェルト・センスの方から、自然に何かしらの反応が返ってくるのを静かに待つ(問いかける)

6)何か反応が得られるようであれば、それを受容的に受け取る。

※時間的な限界や、フォーカシングを終えてもよいという感覚があれば、
最後にフォーカシングの中で得られた体験を丁寧に自分の中に受け取る作業を行ってから、
フォーカシングのセッションを終える。

※これらのフォーカシングの過程は、一人で行うこともできるが、
慣れないうちはフォーカシングの過程を聞いてくれる相手がいるほうが良い。

その場合には、フォーカシングを行う人をフォーカサー、聞き役をリスナーとよぶ。

また、フォーカサーがまだフォーカシングに不慣れであり、
リスナーのほうから積極的に教示を提案するスタイルで行う場合には、
ガイドと呼ばれることもある。

以上

仙台心理カウンセリングスクール
初級編心理カウンセラー養成講座
テキストより抜粋

★フォーカシングは、仙台心理カウンセリングの
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仙台心理カウンセリングの
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