knowledge
心理学の知識

心のケア8|ストレス反応と心の病気

心のケア8 ストレス反応と心の病気

◇災害時 『こころのケア』 にお役立て下さい。
  *正しい知識をもって適切に対処していきましょう。

「ストレス反応」
ストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」と呼び、心理面、身体面、行動面の反応として現れる生体の反応を「ストレス反応」と呼びます。ストレス反応は脳の不安中枢である扁桃体を活性化して不安症状を引き起こします。身体的反応としては、動悸、発汗、めまい、呼吸困難、喉のつまり、頭痛、震え、胃痛、便秘、下痢、不眠など様々な症状を引き起こします。

●ストレス反応と心の病気

・ストレス(ストレッサー)に対する感受性は、
性格や行動パターンなどの個人的な特性や、
その時の心身の状態などによって強い影響を受けます。

また事件、被災後、孤立して相談する相手がいないなどの、
社会的・環境的な状況も大きく関係します。

・被災直後はびっくりして頭が真っ白になったような感じになることがあります。
例えば「自分の住み慣れた故郷が壊滅なんてあり得ない、そんな馬鹿なことが・・」
というように、現実でないような感じがしたり、
思い出しても悪夢か映画でも見ているような気がするかもしれません。

◆1、急性ストレス反応
・直後は出来事を受けとめようと思う反面、現実を否定したり拒否したりするものです。
特に親しい人の行方がわからないとか、ひょっとしたら亡くなったかも知れないと思うと、
いてもたってもいられず心臓がドキドキしたり、冷や汗をかいたりします。
その場から逃げ出したくなったり、家族のことが心配でおろおろするかもしれません。

・なかには冷静で驚かないように見える人もいます。
あるいは妙に不自然にはしゃいでいる人もいるかもしれません。
この反応は急激な精神的・身体的負荷がかかると起こりますが、
およそ1カ月以内に消失します。

●急性ストレス障害(ASD)の特徴と、急性ストレス障害(ASD)の診断基準
※心のケア7 をご参照ください
◆心のケア7|急性ストレス障害

◆2、解離反応(かいりはんのう)
・悲惨な出来事に遭遇したため強烈な精神的衝撃を受けた場合、
現実をすぐには心の中に受け入れる事が出来ず、
自分では気がつかないうちに嫌な感情や耐え難い苦しみを意識下に押し込んでしまい、
その抑圧された心の葛藤が身体症状や精神症状を引き起こすことがあります。

・たとえばあまりにもショックが大きいために、身体には異常がないのに、
声が出なくなったり、立てなくなったりする場合や、赤ちゃん言葉で話し始めたり、
意識がもうろうとすることがあります。

◆3、死別反応
・震災により親しい人を失った場合、落ち込みや憂うつな気分が続き、
怒りをどこにも向けられずに自分を責めたり、
悲しみからなかなか抜け出せない事があります。
なかには後追いしようと考える人もいるかもしれません。
このような気持ちが数カ月続くのはよくあることで、
時間の経過とともに必ず回復してきます。

◆4、外傷後ストレス障害(PTSD)
・震災から1カ月以上経過しても神経の高ぶりがおさまらず、
過覚醒の状態(些細な事にも過敏になり刺激されやすい状態)が続き、
震災の生々しい惨状の現場が頭に焼き付いていて、自分の意思に反して思い出され
再体験されることがあります。このような状態をPTSDと言っています。

・PTSDは強烈で凄まじい体験に起因した反応であるために、
心的なストレスが弱い場合には出現しません。
3か月以内に約半数は完全に回復しますが、それ以上続く場合もあります。

●PTSDの特徴と、PTSDの診断基準
※心のケア5 をご参照ください
◆心のケア5|PTSD

◆5、うつ病
・身体的疲労、精神的疲労が続き、環境が変化することは、
うつ病発症の引き金になります。
特に責任感が強く、几帳面で、融通がきかない人は要注意です。

・うつ病の症状は睡眠障害をともなうことが多く、夜中に目が覚めて眠れなかったり、
早く目が覚めたり、寝つきが悪くなったりします。
そして憂うつな気分となり、興味、意欲、食欲がなくなり何をしても楽しくなく、
悲観的になり、自分を責め、生きていても仕方がないと思うようになるものです。

※ こうした症状があらわれた場合には一人で解決しようとせず、
精神科医・心療内科医やカウンセラーなどの
心の専門家に早めに相談することが必要です。
近くに専門家がいない場合は支援スタッフへご相談ください。

※災害時 『心のケア』 にお役立て下さい。

【心のケア1~心のケア15のリンク】

◆心のケア1|喪失の受容
◆心のケア2|被災した人のケア
◆心のケア3|サバイバーズギルト
◆心のケア4|心身の反応
◆心のケア5|PTSD
◆心のケア6|トラウマティック・ストレス
◆心のケア7|急性ストレス障害
◆心のケア8|ストレス反応と心の病気
◆心のケア9|回復のための心構え
◆心のケア10|子どものケア
◆心のケア11|気遣いの言葉
◆心のケア12|グリーフ・カウンセリング
◆心のケア13|グリーフ・ワーク
◆心のケア14|援助者を目指す傾聴術
◆心のケア15|悲嘆のプロセスから回復へ