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心理学の知識

ウィルパワー|意志力

仙台カウンセリング技法を学ぶ

ウィルパワー

困難があっても、最後までやり遂げる意志の力

【ウィルパワー】目標を達成する人は、心をこう鍛えている!
意志力を鍛えるための「日常の習慣」人生や仕事の成功と関係がある「ウィルパワー」☆

【希望力を高める要素】
「ウェイパワー(Way Power、見通し力」
「ウィルパワー(Will Power、意志力)」

ウィルパワー研究の第一人者である、アメリカ・フロリダ州立大学の心理学者ロイ・バウマイスター博士は、「ウィルパワーの高さは、人生や仕事での成功と関係がある」と考えています。ウィルパワーの高さは、学校での成績、仕事でのリーダーシップ、収入レベル、結婚相手との関係性や心身の健康、そしてレジリエンスとも相関があると言われています。※レジリエンス ⇒ 回復力、復元力、柔軟性、弾力性。ストレスなど外的な刺激に対する柔軟性を表す言葉。。。

一方で、ウィルパワーが弱ってしまうと、自制心が発揮できず、過食や過飲、暴力やギャンブルなどのネガティブな行為に走りやすくなります。やるべき仕事が残っているのに、ついスマホを見たり、Facebookで時間を費やしたり、TVやネットを見すぎたりして時間を過ごした経験・・。このように、ウィルパワーは、目標に向けて何かを成し遂げる前向きな力だけでなく、目標までの道筋にある「誘惑」に負けない、自己コントロール力も含まれているのです。

【成功するために必要なウィルパワー】
◆高いウィルパワー
・学業での成功
・リーダーシップ
・収入
・結婚相手との関係性
・健康
・レジリエンス(逆境に負けない)
・・と、相関がみられる。

◆ウィルパワーの欠如
・過食、肥満
・喫煙
・アルコール中毒
・非行、犯罪、DV
・ギャンブル、浪費
・人間関係の悪化
・・などのリスクがある。

ウィルパワーが消耗してしまうと、何か有意義な目標を立てても、最後まで続きません。別のことについ目が行き、上の空になってしまうこともあります。食べ過ぎ、飲み過ぎ、遊びすぎ、買い物のしすぎ、さらにはタバコの吸いすぎ、カフェインの摂り過ぎにも関係しています。アルコールやギャンブルの中毒を招くこともあります。ウィルパワーはいかに高めるかだけでなく、いかに「消耗させないか」も同じぐらい大事☆☆☆

このようにウィルパワーには個人差があり、その違いは人生の大切な時期における、成功や失敗に関係することがあります。では、もともと自制心が弱い場合は、社会人になってからもウィルパワーが低いままで、仕事でも成功できないのでしょうか??
実は・・・ 研究が進むにつれて、ウィルパワーは筋肉のようなものであるとわかってきました!つまり、ウィルパワーは、『鍛えられる』 のです。腕や足の筋肉は、運動をすることによって鍛えられますが、酷使すると 疲労がたまってしまいます。心の筋肉も同じです。適切に訓練し活用することでウィルパワーは鍛えられますが、過度の労働やストレスなどにより、その力が消耗してしまうことがあります。また、ウィルパワーのキャパシティは無限ではなく、限りがあります。バウマイスター博士は「ウィルパワーの出どころはひとつである」と言っていますが、ウィルパワーを使った後は、充分な休息の時間が回復のために必要です。

【ウィルパワーは筋肉】
1、量には限界があり、使うことで消耗する。
2、訓練することで鍛えられ、訓練しないと脆弱化する。
3、鍛錬するためには、短期間に酷使する必要がある。
4、使った後は、回復までの休息が必要。

【ウィルパワーが低下する5つの原因】
ウィルパワーが枯渇する現象を、心理学では「自我消耗」と称しています。自我消耗が起きると、自制心が減り、自分の思考・感情・行動が制御しにくくなってしまいます。まず大切なことは、心のエネルギーを無駄遣いしない「省エネ」。そのためには、「自我消耗の原因を理解する」ことから始まります。セルフケアを適切に行ない、無駄遣いする元を断ち切る又は減らすことです。認知行動療法では、対話しながら「自我消耗」に気づき『省エネ』の方策を確立して行きます。

ウィルパワーの低下の原因には、主に5つあります。
1、「ストレス」
2、「複数の目標を持つこと」
3、「長時間労働」
4、「血糖値の低下」
5、「決定疲労」

筋肉を鍛えるときと同じように、鍛錬することと、休息をとって回復させることのバランスが大切です。
【3つのコツ】*方法
1、小さな挑戦
2、運動
3、十分な睡眠+良質な睡眠

小さな挑戦の機会は、日常生活や仕事の中にあふれています。
1、姿勢よく歩く
2、足を組まずに姿勢正しく座る
3、悪口や愚痴を言わない(言っている自分の感情に気づく)
4、毎朝、オフィスの机を片付けてから仕事を始める
これらのちょっとした試みが、大きな意志力の違いを生み出します!
仙台心理の認知行動療法は、対話しながら「自我消耗」に気づき、『省エネ』の方策を確立して行きます。

※参考文献「意思力の科学」ロイ・バウマイスター/著(インターシフト)

カーカフ|カウンセリング心理学

『 心理的成長の意味 』

私たちが生きていることの本当の意味は成長することにある。

それゆえに、人間の能力開発とは、
人間成長のための原動力のようなものである。

現在の私たちは、これまでの能力開発の結果だということができる。

つまり、私たちは、成長していってこそ、
はじめて人間であり得るのである。

しかし、忘れてならないことは、
人間の成長が、必ずしも計算通りには行かないということである。

成長は生涯にわたってなされる。

成長の過程にいる人間は、つねに次のステップへと進みながら、
その人生をより豊かに展開させていく。

渦巻きを描くかのようになされるこの成長は、

私たちに「より豊かな人生」と

「より役立つ人間」になることを

約束してくれることだろう。

~ by「ロバート・R・カーカフ」 ~  
*カウンセリング心理学者・社会科学者

リンク

◆【学校における一次・二次・三次的援助サービス】
◆【SOC理論 選択的最適化理論 バルテス】
◆【アサーションチェックリスト 自己表現】
◆【ソクラテス問答法 認知行動療法】
◆【タイプA型行動パターン フリードマン】
◆【タイプa型行動パターンとタイプA型行動チェック】
◆【無意識(潜在意識)と意識(顕在意識)】
◆【原因帰属理論 ワイナー】

※その他『心理学の知識』 関連一覧のリンク

認知行動療法関連リンク

◆仙台の認知行動療法|HSPにも効果的な認知行動療法
◆仙台の認知行動療法|心理カウンセラー養成講座中級編
◆行動療法|スキナー
◆認知行動理論|認知療法
◆認知行動理論|自動思考スキーマ

ジャネーの法則|ポール・ジャネ

ジャネーの法則

ジャネーの法則(ジャネーのほうそく)は、19世紀のフランスの哲学者・ポール・ジャネが発案し、甥の心理学者・ピエール・ジャネが著作で紹介した法則。

主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者により短く評価されるという現象を心理学的に解明した。簡単に言えば生涯のある時期における時間の心理的長さは、年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)。

例えば、50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1ほどであるが、5歳の人間にとっては5分の1に相当する。
50歳の人間にとっての10年間は5歳の人間にとっての1年間に当たり、5歳の人間の1日が50歳の人間の10日に当たることになる。

関連リンク

◆【学校における一次・二次・三次的援助サービス】
◆【SOC理論 選択的最適化理論 バルテス】
◆【アサーションチェックリスト 自己表現】
◆【ソクラテス問答法 認知行動療法】
◆【タイプA型行動パターン フリードマン】
◆【タイプa型行動パターンとタイプA型行動チェック】
◆【無意識(潜在意識)と意識(顕在意識)】
◆【原因帰属理論 ワイナー】

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認知行動療法関連リンク

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EAP|従業員支援プログラム|公認心理師試験

EAP|従業員支援プログラム|公認心理師試験

従業員支援プログラムEAP(Employee Assistance Program)

EAPは、Employee Assistance Program(従業員支援プログラム)の略。

日本では従業員支援プログラムと訳される「職場のメンタルヘルスサービス」です。
(働く人のメンタルヘルスケアサービス)

社員のメンタルヘルスケアをすることにより、社員のパフォーマンス低下を抑えることを目的に、1970年代以降、EAPの導入が爆発的に拡がりました。
特に、日本では「労働契約法」が2008年に施行され、労働者の安全配慮義務が企業に法的義務として課されるようになったことも拡がりの要因です。

近年、労働者の過労死や劣悪な労働環境が社会問題となっていることもあり、これらの背景からEAPを導入する企業は増加傾向にあります。
年功序列、終身雇用制から実力主義、成果主義へと移行した日本の企業では、社員にかかるストレスが日々増大し、社員のメンタル面での不調は企業の生産性にとっても大きなマイナスとなってしまいます。
社員のストレスを減らし、メンタル面でのバランスやコンディションを回復して最大のパフォーマンスが発揮できるようにする取り組みとして、このEAPを利用する企業が増えている訳です。

EAPは、メンタル面での不調または不調になりかけている社員の個人面談などの他にも、全社員対象とした健全な状態を維持するため(第一次予防)のメンタルヘルスケアプログラム(研修)なども準備し、社員の心の健康に寄り添いながら、人事・総務・労務ご担当者様に対して、会社の状況に沿った支援方法等を提供いたします。
人事担当者としても、EAP導入でメンタルヘルスケアを万全にすれば、より活性化された組織作りを目指すこともできます。

※当方では、2009年の開業時より、様々な職種の企業様に対して、カウンセリングやメンタルヘルス研修、健康診断:有所見者の皆様に対しての保健指導も含め、様々なEAP活動をご提案、ご提供させて頂いております。

ハラスメント法改正:ハラスメント対策指針☆

◆職場での発言やふるまいがパワーハラスメント(パワハラ)かどうかを判断するための国の指針が2019年12月23日決定しました。
2020年6月から大企業、2022年4月から中小企業に「パワハラ防止策」を取ることが義務化される際の目安となります。(ハラスメント研修の実施は今後、必須になってくると思われます)

2019年5月に成立した改正「労働施策総合推進法」(パワハラ防止法)は、パワハラを、
①優越的な関係を背景にした言動で、
②業務上必要な範囲を超えたもので、
③労働者の就業環境が害されることと定義
指針では、パワハラを「行ってはならない」と明記しました。

・労使の代表らによる労働政策審議会の分科会が12月23日にとりまとめた指針は、
「身体的な攻撃」や「過大な要求」など、厚生労働省が定めたパワハラ6類型に沿ってパワハラに当たる例と当たらない例を列挙しています。
・大勢の前で威圧的にしかりつけることや、業務に関係ない雑用を強制することはパワハラだと定めたものです。
・相談窓口の設置や社内規定の整備など、企業が防止策を義務づけられたのは「業務を遂行する場所」での正社員や非正規雇用者に対するパワハラで、取り組まない企業には、行政指導で改善を求め、なお従わない場合は企業名が公表される。となっております。

◆EAP(Employee Assistance Programs)

・産業カウンセリングの先進国であるアメリカでは、産業カウンセリングは、
1:従業員援助制度(EAP:Employee Assistance Programs)
2:キャリア開発活動(CDP:Career Development Programs)
という、2つのプログラムで行われている。

●1) EAPは、従業員の精神的、身体的健康に焦点をおき、
直接的、間接的に業務に影響を与える諸問題を処理することをねらいとしている。

●2) CDPは、従業員が企業の人間開発の方針に応じながら、
自己の職業的選択を行うことを援助するために、
評価や相談、計画立案、トレーニングを行うことをねらいとしている。

EAPが現在の産業カウンセリングの中心となっている。
EAPには、ストレスと精神保健、アルコール問題、薬物乱用、夫婦・家族問題、対人的葛藤、経済的問題、法律的問題といった諸問題の解決を援助することが、
作業能力と生産性の向上につながるとの発想がある。その目的を達成するために、短期的なカウンセリングが実施されることになる。

●短期カウンセリングは、基本的に
1:クライエントの問題を傾聴し、問題を模索する段階
2:問題解決に向けた目標設定の段階
3:問題解決に向けた行動計画の立案とその遂行の段階
という3つの段階から成り、理論的には認知行動療法に基づいている。

産業カウンセリングの課題には、相談室の中で共感的な理解と傾聴を中心として、クライエントの自己成長を促すというカウンセリング活動一般に認められる課題に加え
1、職場においてどのように人間尊重の思想を普及するか
2、職場のメンタルヘルスの問題をどのように解決するか
3、職場の人間関係の調整をどのように図るか
4、働く人たちの家族のケアをどのように行うか
5、従業員のキャリア発達を促すためのカウンセリングをどのように行うか
6、国際化や高齢化といった問題にどのように対応するか
7、職制や就業規則を考慮したカウンセリング活動をいかに行うか
8、労働法や労働安全衛生法といった社会的なシステムの中でどのように人事労務管理を行い,働く人たちの心身の健康を維持増進するか
などがある。

EAP|従業員支援プログラム|公認心理師試験

家族の要因がこどもの人格形成に及ぼす影響

家族の要因

家族の要因がこどもの人格形成に及ぼす影響

家族の要因がこどもの人格形成に及ぼす影響について、焦点を絞ってまとめる。

●人間が成長していく上で、遺伝と環境が及ぼす影響について、一般に発達は、そのいずれかのみに依存するものではなく、両者が相互的に影響する。影響を与えるもののひとつに「家系」がある。家系研究法の代表的なものにゴールトン(1912年)による、カリカック一家の研究がある。

この研究は、カリカック一家の両系統の5世代にわたる検討を行った。また、優秀家系の例では、ウエジウッド家、ダーウィン家、ゴールトン家の研究結果がある。

研究結果によれば、カリカック一家の場合、遺伝的要因が悪かったからでなく、その社会経済的、あるいは文化的環境が劣悪であったため、十分な家庭教育、学校教育が受けられなくてその結果として子どもたちが社会的に不適応となってしまった可能性がある。逆にゴールトン一家の優秀一族の場合には、豊富な教育と訓練を施すことが可能であったので、優秀な学者などが輩出したとも考えられる。

子どもの人格形成に影響を与えるものとして「初期経験」がある。初期経験とは、発達の初期の段階に、ある特定の経験をはく奪されたために発達が遅滞したり、ある能力が獲得できなかったりすると、それを歴年齢が進んだ後に追経験しても、もはや回復は不可能であるとされている。

初期経験は特定の時期(臨界期)以外には、獲得するのが困難であるということを、具体的に証明している例として、米国カリフォルニア州で生まれたジーニーという女の子の例や、ハーロウによるサルの遠隔飼育実験、ローレンツの刻印づけなどがある。

初期経験がうまくいかなかった場合、知能の発達にも強い影響が及び、「同化と調整」スイスの心理学者ピアジェ(1896-1980)の理論が、維持できなくなり社会に適応できない状態に陥る。

以上の研究結果をまとめながら、ひとつの印象深い映画が思い出された。

1988年に発生した「巣鴨(すがも)子供置き去り事件」を題材として、2004年上映された、誰も知らない」(是枝裕和監督作品)は、マスコミでも大きく取り上げられ、記憶に新しい映画である。映画の中で、残酷シーンはほとんどないものの、実際は非常に凄惨さを感じざるを得ない事件であった。
その後の報道によれば、一度も学校に行く機会を与えられなかった長男は、事件発覚当時、中学生であったが、自分の氏名を漢字で書くことができなかったとされている。
漢字を覚えるということについては、今後、獲得可能であるものの、「初期経験」については、ほとんど不可能である。

幼稚園や保育園に通い、友だちと遊ぶ、ケンカする。善悪を判断するちからをつける。小学校での先生や同級生との関わり、春夏秋冬のイベントを体験する。そして何よりも、子ども時代に子どもとしての経験を情緒的に楽しむこと、親(養育者)に甘えること。思春期までに必要だった経験を取り戻すことは「臨界期」を過ぎてしまった中学生にとって、非常に苛酷のように思えた。

今、社会のなかで私たちにできることは一体何だろう。この事件発覚により、児童相談所やその他の行政、公的機関への要求が大きく変化したが、私たちも、社会の中で生きるひとりの人間として、些細な援助や、「自分にできること」を、それぞれが実践できるよう、微力でありながらも、心がけて行きたいものだ。

仙台市 田村みえ 「家族の要因」東北福祉大学 心理学レポート

人間の知覚|公認心理師試験

人間の知覚|公認心理師試験

◆知覚とは、刺激を受動的に感受することではなくて、人が情報を能動的に「つかみとる」働きであることをわかりやすく説明する。

■私たちの心が外界の物事を感じたり知ったりするはたらきは感覚あるいは知覚と呼ばれる。この感覚、知覚の働きこそが私たちの心が外の世界から情報を得る唯一の手段である。私たちの生体は何かを知覚するとき、感覚受容器によって情報を取り入れ、脳においてさまざまな、情報処理をおこなっている。

さらに、それを基に外界に対して適切な行動のための指令をつくり、実際に行動をとっている。情報処理が行われる際は、それまでの記憶や認知されていたものが大きく影響してくる。つまり、私たちが知覚しているものは、刺激を単純にそのまま受け入れた結果ではないということがわかっている。

★ 「図と地の知覚」 について考えてみよう。

誰もが一度は見たことのある図(2人の黒い横顔と白いカップ)

*この図はルビンの壺(又は盃)と呼ばれている。

「ルビンの壺」を見たとき、黒い横顔を発見する人、または白い壺を発見する人の2通りに分けられるが、この時、受動的に感受していれば、まとまりとしての形は見ることができない何らかの解釈が行われたとき、ひとつのまとまりとして認識され、白い壺や、黒い横顔をみることができる。さらには、健全な人間であれば、自由に壺から横顔に反転(切り替え)させて、知覚することができる。

しかし、何らかの強い思い込みや、周囲の環境によっては、壺も横顔も見ることができなくなり、壺はみえても横顔をみることができない、つまり図と地の反転がうまくいかなくなる場合がある。

このことは「錯視」により、わたしたちは周囲の環境や、認知のゆがみ、あるいは思いこみなどにより、「事実を歪んだ状態でみてしまう」ということが、おこるためである。

私たちは、ものを見るとき、これまでの経験的知識から抽象化されて形成されている何らかの枠組み(枠型:スキーマ)が選び出され、それを適応することで、再生想起時には、その枠を土台として、大筋を理解する。つまり「知覚は刺激に対して忠実ではなく、その現実的意味に忠実である」現実的意味とは、個人の経験的知識によって異なるものと考えられる。

ジェローム・ブルーナー(アメリカの心理学者)は、経済的に恵まれない子どもたちは、経済的に恵まれた子どもたちに比べて、貨幣の大きさを単純な円よりも大きく知覚する傾向が顕著であるという報告をおこなっている。(「知覚と錯覚」宮本敏夫/著 P242)恵まれない子どもたちは、日々の経験から貨幣の価値を大きく認知したことがわかる。なかなか手に入らないものは「価値が大きい」という枠組み(スキーマ)が形成されたわかりやすい例であると言えるよう。

私たちは日常、様々な刺激を自分の経験とスキーマをもとに、好きなように解釈している。例えば、雪の日にうっかり滑って転倒し整形外科に通院した経験があったとしよう。すると、似たような状況で雪を見た時、「危険」だとか「注意」しようとか「外出は中止」しようなどと、自分自身の安全を確保するために行動も制限してしまう可能性が大きい。パニック障害の場合にも、たまたま「電車の中で苦しくなった」という状況を、「電車=発作」と関連づけてしまい、その意味から離れられない状態に陥る。

また、幼少時期に親(又は養育者)からの拒否を受け続けると「自分は人から愛されることはない」といったスキーマが形成され、そのスキーマを背景とし「誰とも仲良くなれない」「誰からも愛されない」といった否定的な歪みをもった自動思考を繰り返すことになりかねない。

これらの例では、過去の苦痛で不快な体験や精神的な破綻を繰り返さないように処理した結果、ひきこもり、パニック、対人恐怖などに関連していくことがあると考える。

私たちがより良く生きるために形成されるはずだったスキーマも、過去の経験や体験の積み重ねによって、記憶、認知、知覚、感覚は、不都合なスキーマとして形成されてしまうことが少なくないのかもしれない。

自分自身を意識することで、「ものの見方の枠(スキーマ)」に気づき、自覚、認識することで、自分の「スキーマ」は、いつ、どのようなことがきっかけで形成されたのかを、探ってみるのもおもしろい。

心身ともに健康に、そしてよりよく生きるためには、自分自身の中で、日常生活に不具合を起こしそうなスキーマを、ぜひ「認識」し、「改善」していきたいものだ。

仙台市 田村みえ 「人間の知覚」(東北福祉大学 心理学レポート)

人間の心と動物の心|公認心理師試験

人間の心と動物の心

【人間の心と動物の心の違いについて考えてみたい】

◆群れをつくり行動する動物がいる。人間も群れ(社会集団)をつくり日常を生きているが、動物が群れをつくる目的と人間が社会集団の中で行動する目的は多少違っているように思う。行動の裏には目的(原因)が存在する。動物の行動と人間の行動で心に関係していると思われるものを取り上げ、考える。
●野生動物が群れをつくって行動する目的は生存、安全性の確保を合理的にすることが第一である。対して人間が社会集団の中の一員として生きていく目的は動物のような生存、安全性の確保はもちろんなのだが、それよりも

★ 「内定要因」(性格、動機、意図など)
★ 「外的要因」(社会的、物理的状況など)
★ 「内定要因と外的要因」両方とが、からみあった結果、行動が決定されるものとが混在する。

●人は人をどのように判断、理解するのか、ということについて1980年にH・H・ケリーらが明らかにした。*(Kelley1921~)アメリカの社会心理学者。小集団研究他、帰属理論を体系化した。ケリーらによれば、私たちは対象者の行動を無意識的に観察していると述べている。

【1】コンセンサス:他の人たちと同じように行動しているかどうか観察する。
【2】一貫性:対象者がほかの機会にも、この特定の刺激、出来事に対して同じように行動しているかどうか。
【3】弁別性:対象者がほかの異なる刺激や出来事に対しても同じように行動しているどうかを観察する。

以上の3つの次元に関する情報を無意識的に観察している。と論じている。(社会心理学)
このことから、人は特定の刺激や出来事に対して高度な「思考」や「洞察力」を上手に使い行動を決定していることが理解できる。このことは、大まかな部分で動物と同じように思えるが、実際、人間には動物とかなり違う部分があり、それが「こころの違い」につながっている。

人類史において、人間が生活を向上させるための工夫を次々(後期石器時代)に開発した。これを実現する上で特に重要な役割を果たしたのが「言葉」である。たとえば、動物の世界では「獲物」を目の前にすると力の強い「ボス」が何らかの実権を握っている。

力の弱い者は「生存」するために従わなければならず、我慢して待つ、又はあきらめるという結果になることも少なくない。しかし、人間はどうだろう?必ずしもあきらめるということを全員が選択するだろうか?人によっては工夫し試行錯誤を繰り返し、言葉をうまく使い分け、争わずに欲求のものを「獲得」することも可能だ。言葉をうまく表現することが苦手な人間は、獲得できず「葛藤」に陥り、悩み、苦悶するという状態になるかもしれない。

葛藤に陥ったり、悩み、苦悶するというのは動物にも起こることだが、人間とは質もレベルも比較することはできないものである。なぜなら測定器がないからであり、人間のこころの研究や実験は数多く実施されたのに対し、動物のこころについての実験はまだまだ未知の世界でもあると言えよう。動物は「本能優位」で「思考」が弱いことが少なくない。
人間は「本能」を「理性」によって抑えることが可能であり、また「本能」を満たすための行動を「思考錯誤」するという特徴があり、現代では「本能」より「思考優位」が強くみられる。

動物には、もちろん、こころがある。しかしそれはあくまで「本能」に近いものであって、人間のように恋愛をして「苦しむ」とか「葛藤」に陥るというレベルには程遠いということが言える。人間は「言葉」を使うことにより「感情」を相手に冷静にそして、中立的な表現で伝えることが可能になった。動物は「鳴き声」などが言語とも言えるが、人間からみた動物の表現はあくまで、スキンシップやしぐさ、動作などの「態度」「五感」で伝達しているという風に理解できる。

ひとつ残念なこととして、人間は「本音と建て前」を分けて表現する。言葉を使うことで「進化」を遂げたゆえ、起こったものでもある。「本音と建て前」の表現は、TA(交流分析)の理論にある「裏面的交流」になる。「裏面的交流」は、長期化すると、私たち人間のこころに大きな影響を及ぼし、人間関係の破綻やトラブルに発展する要素の強いものであることは確かだ。人間は進化により、他の動物には類をみない「言葉」を使えるようになった。良い意味で「言葉」を上手に使いこなし、調和、バランスのとれた人間関係を築くよう私たちも日々、心がけて行きたいものである。

仙台市 田村みえ 「人間の心と動物の心 (東北福祉大学 心理学レポート)

心の世界|公認心理師試験

心の世界

【心の世界】

心の世界は、意識される世界のほかに、意識されない世界を含むことを、具体的にわかりやすく説明する。

◆Aさんは大勢の前に出ると決まって言葉が出にくくなるという悩みを抱えるが、その理由は意識できない。Aさんの心の世界はどのようになっているのだろう。意識される世界と意識されない世界「無意識」について、フロイトやユングの理論がある。主にフロイト(1856~1939)の理論を引用しながら説明しよう。

フロイトによれば、人間の心は「意識」「前意識」「無意識」の三層からなると考えていた。

●フロイトの局所論で、「意識」とは、いま気がついている心の部分で、眼で見たり、考えたり、感じていることに気づいている。自分が何をしているのか(行動)、何を考えているのか(思考)が自身でわかっていることを言う。

「前意識」

「前意識」とは、いま気がついていないが努力によって意識化できる心の部分で、意識の下にあるが、思いだそうとすれば意識の世界に呼び戻せる領域のことをいう。
昨日あった出来事や、過去に出会った人の名前を思い起こす際に、なかなか思い出せないが、しばらく考えたり、注意を集中していると思い出すことができる。このように、今は意識していないが、注意や意志によって思い出せる心の世界である。

「無意識」

「無意識」とは、抑圧されていて、意識化できにくい心の部分と説明している。意識の奥底にある深い層のことで、意識から最も遠い領域である。これは、夢や催眠、精神分析によって意識されるようになり、人間行動の源泉や動機となっている。

「無意識」の領域

「無意識」の領域には<本能的衝動(生得的な心的エネルギー)>や意識化されると都合の悪い記憶、動機、観念などが抑圧されている。ということであり、この無意識的な心的エネルギーは、たえず、意識領域へ侵入しそれらを充足しようとする。

このことから考えると「大勢の前に出ると言葉が出にくくなる」というAさんの状態は、無意識に閉じ込められた本能や欲求や衝動がたえず「意識」に進入しようとする心的エネルギーの現れであり、人間の意識や日常生活の行動に影響を及ぼすことがわかる。

Aさんの例以外に、理由のない不快感、言い間違えや物忘れなど、無意識は心の奥深くからのささやきかけとして、日々の日常生活に大きな影響を及ぼす。人は、自分の行動や考え方、感情の動きなどを自分で確かに感じている。しかし、常に理性的に見える人でも、何気なく起こす行動もあれば、気持ちと裏腹な行動を起こす場合も少なくない。
これは意識的に自覚されていると考えた心の動きも、実はその下(無意識)にある様々な本能や衝動や欲求に動かされているためだ。
無意識の領域に隠れている本能や欲求、衝動が私たちのこころ全体を動かしているのである。

人間も動物である以上、生まれながらの本能や衝動や欲求は本来、生きるためのエネルギー(リビドー)になるはずだが、主に社会によって抑圧され、意識の世界から排除される。しかし無意識の領域に閉じ込められても、それらは絶えず意識に進入しようとする強い力を持っているため、その人の意識や行動が操られるのである。

私たちは日常、喜怒哀楽を日々体験するが、人間の許容範囲を超えた怒りや悲しみは、防衛機制という仕組みによって処理される。防衛機制は人間のこころを守るしくみとして機能するものである。

Aさんの「大勢の前に出ると決まって言葉が出にくくなる」という状況を、防衛機制に照らし合わせてみると「抑圧」に関連していることがわかる。

【防衛機制の「抑圧」の定義】

「強い不安、苦痛な観念や記憶、不快な感情を意識から締め出し、無意識にとどめておくこと」である。

◆後日、Aさんの無意識が意識化され、ある出来事がよみがえった。小学1年の学習発表会での失敗である。その時のAさんの落胆、悲しみ、屈辱、怒り、などの感情は小学校低学年の子供にとって、非常に苦痛で耐えがたい出来事として体験学習され、防衛機制の「抑圧」が作用し、無意識に閉じ込められてしまったものと考えることができる。

私たちが安全に生きるために働く防衛機制も、時には生きるための邪魔になってしまうことも少なくない。しかし、そのようなありがたく、不思議ともいえる、人間の特徴を理解しながらバランスの良い日常生活を保ちつつ、どこかに幸福感も得られるような質の高い日々(QOL向上)を送って行きたいものだ。

仙台市 田村みえ 「心の世界(東北福祉大学 心理学レポート)」

フォーカシング|ユージン・ジェンドリン|公認心理師試験

フォーカシング|ユージン・ジェンドリン(1926~2017)|公認心理師試験

フォーカシング1 focusing 
ユージン・ジェンドリン(1926~2017)

◇フォーカシング
焦点づけ・ピント合わせ focus(s)

まず、気がかりなことを思い浮かべて、それを頭がどう理解しているかでは無しに、
身体の中で感じられている感覚に注意を向け、問題を全部つつみ込んでいる丸ごと、
全体としての一つの大きな気分を感じるようにし、
経験そのものに触れる事によって、
そこから自然に示されてくる(感じる)意味に気づき、
新しい力や方向性を得るようにアプローチして行く心理療法。

◆フォーカシングは心理療法のひとつであり、
自己理解と体験学習を促すための方法。

1960年代、アメリカのユージン・ジェンドリンによって開発された。

「体験学習」を具体的に言えば、人間の内的変容である。

内的変容とは・・・
外界の出来事にとどまることなく内面深く物事を感じ取ることにより、
問題解決を生み出す現象を意味する。

【具体的な体験段階】

1:外界の出来事にふれる

2:外界の出来事+自分についてふれる

3:外界の出来事+個人的反応についてふれる

4:反応的感情+内的感情を表現する

5:自己描写+問題提起をする

6:問題提起+答えを見出す

7:6以上の答えに対し確信的であり拡張的である

・フォーカシングの特徴は、以上の過程のうち、
一つの問題についての身体感覚に注目するところにある。

漠然としているが、明確に感じられる身体感覚
「何かの感じ」(フェルト・センス felt sense )に、
いろいろ問い合わせると、新たな問題が見え、その問題についての身体感覚から、
また別の問題が問題となって行き、問題の変容の間に関連性がみえる。

また個人にとって、より中核的だと思われる問題の出現によって身体感覚から、
OKというサイン(フェルト・シフト felt shift )が出てくる。

このような身体感覚に注目し、これを利用して個人の心の「問題」について、
何らかの変容を図るのが、フォーカシングである。

これは、外界の出来事だけを話すクライエントよりも、
「感じ」「感覚」を話すクライエントの方が改善しやすい、
という、ジェンドリンの発見に基づいている。

◇フェルト・センス(felt senses)

●定義:フェルト・センスは意味を含んだ身体感覚

からだの中心部:お腹・胃・胸・喉のあたりで感じますが、
からだの他の部分でも感じられます。

あなたがからだの内部に注意を向ける時、すでにある場合もありますし、
時にはそれが形をなすための条件作りが必要となることもあります。

からだの中でフェルト・センスを感じて、
それが生活や人生のどんなことについての感じかを尋ねることから始めたり、
生活や人生上の問題をひとつ選んでそれについてのフェルト・センスをもたらす為に、
あなたのからだに問いかけることから始めたりできます。

フェルト・センスはしばしば感情を含んでいますが感情とは違います。
フェルト・センスはしばしば漠然とした、微妙で説明しにくいものです。
とらえどころのない、つかのまのものです。
「まだ、あなたが言葉にしていないもっと多くの何か」を含んでいます。
※ただ身体的というだけにとどまるようなものではありません。

【フォーカシングの方法】

(A) 間(クリアリングスペース)を置く

・日常的な心配事に入り込まず、それについては脇に置くようにする。
そして、「どうしていますか」
「何か気になっていることがありますか」と、自分で自分に問いかけてみる。

(B) (A)で列挙された気になる事の中からひとつを選ぶ

・気がかりなことの中から一つ選ぶ。
これは具体的な事柄の方が良い(例:母が口うるさいなど)

(C) フェルト・センス felt sense をつかむ

・胸部や腹部にある、まだ明確でない意味を含んだ感覚をつかむ
(例:さみしいような、なんとなく胸がもやもやする・・・という感じ)

(D) 取っ手(カバン等)にハンドルネームを付ける

・フェルト・センス(もやもやする等)に、
それにぴったりくる言葉やイメージをつける。
(例:胸を何かで圧迫される感じに「もやもや君」とか)

(E) 取っ手の確認

・取っ手を確認し、言葉やイメージを身体の中に響かせ、その見出しを使うと
フェルト・センスの全体が現れるかどうかやってみる。

(F) 問いかけ:問いかけを行う

・このことの何が~みたいな感じなのか。
何があれば(起これば)いいのだろう。
この取っ手が一番ひどくなったら、どうなるのだろう。

◇ここで問題の感じ方に変化を起こして開放感を得る。
そして解放感とともに気づきを待つ(フェルト・シフト)。

ここでフェルトシフトが起きない場合は、フェルト・センスに戻り、
2ラウンド・フォーカシング、3ラウンド・フォーカシングを行う。

(G) 受容

・自分の気づきや気持ちを優しく肯定的に扱うこと。
傾聴技法が非常に効果的です。

● 以上のような体験過程を経て、
内的変容に至る心理療法をフォーカシングという。

by ユージン・ジェンドリン Eugene T. Gendlin(1926~2017)
※アメリカの哲学者・臨床心理学者で、体験過程(Experiencing)理論を提唱し、
フォーカシング(Focusing)を創始した人物。

フォーカシング2 focusing ユージン・ジェンドリン

◇フォーカシング、焦点づけ focus(s)ing

1、フォーカシングの準備

まず、フォーカシングにどれくらい時間が取れるかを予測・確認します。

30分くらい取れれば理想的ですが、10分でも十分効果があります。
10分のフォーカシングでは後半2分程度が終了のために使われます。
30分であれば5分くらいです。

寒くなったりしないように、場の温度を調整するか上着を着て調整。
フォーカシングの内容をメモするための筆記用具準備等。

※時間はあくまでも目安のですので、
フォーカサー(セラピスト)の感覚で調整して構いません。

2、問題を思う

フォーカシングの入り方は2つあります。

A:問題を決めて始める方法で。
B:漠然と身体からわき上がるフェルトセンスを待つ方法。

この場合、今抱えている問題が対象になり、
意識していないものになることもあります。

ここでは、問題を決めて始める方法を書きます。
深呼吸を2回して、問題を思います。

深呼吸2回というのは、
身体への条件付けですので別の方法でも構いません。

深呼吸2回がフォーカシングのスタートだと身体に思いこませれば、
いつでも簡単にフォーカシングに入ることができるようになります。

前回中断したフォーカシングの続きをする時も、
中断した問題を思ってそこから始めることができます。

※毎回同じように入ることで、状態を作りやすくなります。
(アンカー又は、ルーティーンなどと呼びます)

3、体の内側に注意を向ける

自分の注意を身体の内側に向けます。
多くの場合、フェルトセンスは胃や、みぞおち、胸、のどなど、
身体の中心線に沿って現れることが多いのが特徴です。
もちろん、他の場所で感じるケースもあります。

上下に往復してフェルトセンスがないか探してみます。
それでも見つからない場合は、
身体の中心線から離れたところも探していきます。

瞑想慣れ(ヨガなど慣れ親しんでいる方々)している人の場合、
身体感覚がなくなってしまうとフォーカシングになりませんので、
その場合は目を開けてみたり、身体を揺らしたしたりしながら、
「身体の感覚を維持」すると良いかもしれません。

4、気になる感じを見つける

フェルトセンスが見つかったら、他にもないか探してみます。
いくつも出てくる場合もありますし、一つしか出てこない場合もあります。
複数出てきた場合は、同時に扱うべきかどうか、体に聞きます(傾聴)。

扱うべきでない場合や、多すぎる場合は、
クリアリング・スペースの方法で対象のフェルトセンスを絞ります。

5、見つかった感じを客観的に見つめる

見つかったフェルトセンスを客観的に認めるために、
「こんにちは」と挨拶をします。

フェルトセンスは、あなたの中に、そう感じる部分があるということです。
挨拶をすることは、存在を認めることです。

6、その感じを比べる

挨拶をしたフェルトセンスについて、名前を付けます。
名前を付けたら、その名前を身体に戻して確認します。

つまり、そのフェルトセンスに、ハンドルネーム
「あなたを○○って呼んで良いかな?」という風です。

リアクションとしては、

・しっくりする感じやピッタリする感じ。
・一部分がしっくりする感じ。
・しっくりいかない。

など・・・いくつかあります。

しっくりいく感じがするまで、ぴったりの名前を探します。

この名前がしっくりいかないと、
うまくコミュニケーションが取れない場合が多いので、
面倒がらずに最適な名前(ハンドルネーム)をつけましょう。

7、ゆっくりと付き合う

しっくりいく名前が見つかったら、
その隣に座ってみます(イメージです)。

相手(フェルトセンス)が話をしてくるかどうか少し待ってみます。

話しかけてこなければ、
「○○さん(つけた名前)、こんにちは」と言ってみます。

8、聞いてみる

フェルトセンス側から見るとフォーカサーは外から近づいてくるものです。
こちらと同じ感覚をフェルトセンスが持っているとは限らないので聞いてみます。

フェルトセンスと仲良しになれると、
この後のフォーカシングがとてもスムーズに進みます。

9、質問する

○○について質問する段階です。

例えばフェルトセンスが怖がっているようであれば、
「どうして怖がっているの?」
「怖がっている理由は何かな?」と聞いてみます。

いろいろと話をした(コミュニケーションが成立した)後に、
「それには何が必要なのかな?」と傾聴したあとに、尋ねてみます。

そして、『何もかも大丈夫』になったら、
「どんな感じか教えて欲しい」と身体(センス)に頼んでみます。

フェルトセンスとフォーカサーが協力して問題を理解していきます。

10、終わりにする

問題についてお互いの理解が得られれば、終了になります。

セッションを終わりにする時はフェルトセンスを尊重して
「あと1,2分で終わりにしても大丈夫かな?
それとももっと私に伝えたいことがあるかな?」と聞いてみます。

ここで、一気にセッションが進む可能性もあります。

終わりにする時に、まだ解決する問題があると言うことであれば、
次回また戻ってくることをフェルトセンスに伝えます。

それには、「また戻ってくるからね」と伝えるだけで大丈夫です。

11、最後に

「私につきあってくれた部分と私の身体に感謝します」と、
感謝の気持ちを伝えます。

この手順は今後のフォーカシングをスムーズに進めるために必要なことです。

以上のような体験過程を経て、
内的変容に至る心理療法がフォーカシングです。

by ユージン・ジェンドリン Eugene T. Gendlin(1926~)
※アメリカの哲学者・臨床心理学者で、体験過程(Experiencing)理論を提唱し、
フォーカシング(Focusing)を創始した人物。

体験過程 experiencing

【体験過程】

「ある特定の内的行為」とは自分の内部で感じられる気持ち(体験)との関わり方。
体験(experience):人間が今この瞬間に経験している感情や気持ち。
体験は常に移り変わっていく(ing)
⇒(experience)+(ing)=(experiencing)体験過程

・人間がいま、この瞬間に経験している感情や気持ち。
その体験され、感じられている何らかの流れを体験過程という。
それは、知的に考えるとか言語で表現できるようなものではない。

experiencing という語におけるingは、
「体験」(experience)を一つの過程と考えていることを示す。

体験過程という用語は、
過程という枠組みみよって見られた全ての「体験」を指している。

心理学において「体験」という言葉は、それがどこで用いられようと、
具体的な心理学的事象を意味している。
体験過程は、具体的にまさに進行している種々の事柄の一過程である。

◇体験過程は、一つの感じられた過程( a felt process )を意味する。

その意味は内部的に感覚され、
身体的に感じられた諸事象ということでもあり、
人格、あるいは心理学的事象を構成している具体的な「もの」は、
この身体的に感覚され、感じられたことの流れである。

それは、具体的、身体的な感情の過程であり、
それは心理学的および人格の現象に関する基本を構成している。

体験過程スケール 評価基準早見表

1:事実をたんたんと述べる。「私」が入らない。
2:「私」が入り感情が入らない。
3:「私が」と「感情」が入る→すっきりした
4:「私」が、人の感情を察したり配慮したりする。
5:人から受ける不快は他に自分に原因があるのかなぁ~と思う(視野の拡大)
6:「事実対する感情」ではないことに気づく
7:気づきが応用されていく・・・自分自身の嫌な部分を別の人に映して嫌う=気づく

☆1~3は、気づきが得られない状態=フォーカシングで活用UP
☆フォーカシングの適用:健常者の自己理解
⇒ 1~3のクライエントに特に有効→(4~7へ徐々に導く)

心理療法とは

・個人が概念と言うものを用いながらも、それをただ単に理論的にのみ用いては、
決して得られないような、何かそれ以上のものを達成し得るところの一つの方法である。

その本質を一言でいうならば、人間の感情と人間が用いる概念との間に存在する、
種々の関係の新しい認識である。

・体験過程は、この心理療法過程を理解するのに役立つ概念として、
アメリカの臨床心理学者
ユージン・ジェンドリン(1926~2017)が1955年に提唱した。

【6つの特質】

(1) 感情の一つの過程であり、知的理解とは区別される。

体験過程とは、感じられる(feel)ものであって、単に思考されたり、知られたり、
あるいは言語的に表現されるようなものではない。

(2) 今、この瞬間において、おきる一つの過程である。

今、ここに感じることに他ならない。

(3) 個人による現象的場における一つの感じられた素材。

個人による現象的場における一つの感じられた素材として、
直接に問い合わせることができ、指摘できる。
体験過程は、自らの内面に目を向け、
この流れという一つの素材を直接指示し、言及出来るものである。

(4) それは言葉以前に感じられるもの。

個人は自らの現象的場における一つの素材として、
それに直接指示し、それに導かれて概念を形成する。

(5) 潜在的な暗黙の豊かな意味をもっている。

暗黙に含まれている意味は、単に感じられるだけのものであり、
後に至るまで明示されないかもしれない。
だが、この暗に含まれた意味が足がかりとなって概念的明瞭化が可能になる。

(6) 前概念的、有機体的な過程であり、身体を通して感じられるものである。

ある瞬間に体験しつつあることがもつ多くの暗黙の意味・含蓄は、
かつて一度概念化されたものが抑圧されたというものではなく、
これらの意味は、前概念的なもの。
気づかれてはいるが、まだ分化されていないものと考える。

◇体験過程の理論は、カウンセリング・心理療法・人格論や創造性などにも影響を与え、
また、カウンセリング技法の精密化をもたらした。

【実習の手順】

●ジェンドリンによる、
「技法としてのフォーカシング」をショートフォームという。

1)クリアリング

2)具体的には、まず胸の奥や腹の底など身体の中心部分にぼんやりと注意を向けながら、
何かの気がかりにまつわる感じ(フェルト・センス)が感じられるのを、受容的な態度で待つ。

3)そのフェルト・センスにぴったりな言葉(ハンドル)を探し、
見つかれば、その言葉がフェルト・センスにぴったりかどうかを突きあわせて感じてみる。

4)違っているようであれば、再びぴったりくる言葉を探し、
もう一度、フェルトセンスと照合してみるという過程を繰り返す。

フェルト・センスとハンドルがぴったりであれば、フェルト・シフトと呼ばれる、
ぴったりだという感覚と解放感が得られることがある。

5)さらにフォーカシングを続ける場合、今度はフェルト・センスに対して、
「何がそんなに~なのか」「その感じは私の生活の何と関係があるのだろうか」などの質問をし、
フェルト・センスの方から、自然に何かしらの反応が返ってくるのを静かに待つ(問いかける)

6)何か反応が得られるようであれば、それを受容的に受け取る。

※時間的な限界や、フォーカシングを終えてもよいという感覚があれば、
最後にフォーカシングの中で得られた体験を丁寧に自分の中に受け取る作業を行ってから、
フォーカシングのセッションを終える。

※これらのフォーカシングの過程は、一人で行うこともできるが、
慣れないうちはフォーカシングの過程を聞いてくれる相手がいるほうが良い。

その場合には、フォーカシングを行う人をフォーカサー、聞き役をリスナーとよぶ。

また、フォーカサーがまだフォーカシングに不慣れであり、
リスナーのほうから積極的に教示を提案するスタイルで行う場合には、
ガイドと呼ばれることもある。

以上

仙台心理カウンセリングスクール
初級編心理カウンセラー養成講座
テキストより抜粋

★フォーカシングは、仙台心理カウンセリングの
心理カウンセリング個人セッションでも
必要に応じて取り入れております。

仙台心理カウンセリングの
「心理カウンセラー養成講座」(初級編)で、
理論と実践を体験的に詳しく学べます。
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仙台で心理カウンセリング|心理学の世界

仙台で心理カウンセリング
心理学の世界を学ぶ

【臨床心理学】

心理学というと多くの人が臨床心理学を思い浮かべる人が多い。臨床心理学は、人の悩みや問題を抱えた人を援助する方法を考える学問です。心理学的検査及び診断や心理療法の領域を含んでいます。また、精神医学的な知識、自己理解も必要になります。ほかの心理学とも関係が深いのも特徴です。

具体的には、心理療法(技法)として、精神分析学や分析心理学、来談者中心療法、行動療法、遊戯療法、催眠療法・自律訓練法などさまざまです。検査方法も性格検査の質問紙法、ロールシャッハテストのような投影法、作業検査法などさまざま。臨床心理学は、主観が大きく作用するだけに、流派や考え方が異なります。

【教育心理学】

教育課程における心の働きを心理学の知識と方法によって理解しようとする学問です。人間の発達には学習が欠かせません。心理学でいうと学習とは、体験や観察などを経て知識や技術、態度、価値観、思考力などを身につけることであり、学校教育だけでなく、生涯にわたって行なわれるものを指します。

「発達」では発達段階の心理的特徴、発達の法則、遺伝と環境の関わり、教育が発達に及ぼす影響など。
「人格」では知能や性格などの個人差やその構造、発達・形成の過程、欲求耐性など。
「学習」では学習過程や関連する知識・思考・記憶の働きと発達など。
「測定・評価」では知能や性格特性の測定、学力の評価などを研究します。

【発達心理学】

発達心理学は人間の生涯の観察から発達の法則を発見しようとする学問です。この分野は乳幼児心理学、児童心理学、青年心理学、老年心理学と、人生の区切りで細分化されることがあります。さらに知能の発達、人間関係の発達、感情の発達などに分けられることもあります。障害児の発達臨床、保育実践に関することもこの分野に含まれます。まさに生涯を通して成長、発達を続ける人間について考えていく学問です。

【認知心理学】

コンピュータ技術や情報工学の進展が、心理学にも大きく影響しました。認知心理学は、認知を人間の情報処理過程とみなして進められる。知覚、記憶、思考、言語など、大きく4つの人間の情報処理の仕組みについて研究が進んでいます。知覚研究では、感覚や形・空間・運動の知覚の問題を、記憶研究では記憶のプロセスや忘却の問題を、思考・言語理解の研究では問題解決過程や概念・推理・象徴・記号、知能の問題を扱います。

【社会心理学】

人は日常の暮らしで他人と互いに影響を与え合っています。その対人相互の作用の観点から人の行動を科学的に究明します。暴動などに見られるパニックの心理は社会心理学の1つです。国際化、高齢化、情報化、環境問題などは日常の生活にも影響を与え、人と人の相互関係も変容しています。その中で起きる問題をどのように克服したらよりよくいきていけるのか、というニーズに期待も高まっている。

【犯罪心理学】

犯罪行為をする場合の人間の心のあり方、働きについて研究する応用心理学の一分野です。心理学の中でも特殊な分野に入ります。なぜ罪を犯すのか、罪を犯した人の社会復帰などが研究対象です。人間の心に秘められた異常性、本性などを知ることで犯罪行為の予防、再犯の防止に役立てられる。精神分析理解、社会病理的理解から犯罪者の人格に迫ったり、人格形成に関わる家庭の要因・学校不適要因・社会不適要因などの研究です。

【産業心理学】

産業心理学は、組織と人の関係(組織のあり方、人間関係、仕事の条件、採用・人事など)、消費と人の関係(売る側、買う側の心理的価値に基づく消費行動)、健康と人の関係(心と体の病の治療、ストレスを克服する力の育成)を学習する。現実に起きている事象を研究するだけでなく、解決に向けてどのように取り組むかというところまで研究します。
「産業カウンセラー」になるために学ぶ理論としては、重要で欠かせない内容となっています。

【人格心理学】

臨床心理学の基礎ともなる領域で、性格心理学とも呼ばれます。人格(パーソナリティ)とは各個人をその人独自のユニークな存在として基礎づけているものと考えます。パーソナリティのとらえ方は様々な立場があります。パーソナリティをいくつかの典型に分類する「類型論」、どんなときも一貫している行動傾向に視点を置く「特性論」、また自我の働きを中心にしている「力動論」、行動の状況依存を重視する「状況論」などがある。性格とは何か?個性とはなにか?他者理解とは何か?など人格形成に注目します。

【家族心理学】

家族心理学は、家族療法を背景に問題の予防、コミュニケーション、問題解決、家族社会学的見方などを学習する。家族療法とは、家族全員とコミュニケーションを取り問題の把握や原因の詳細を解明・解決する療法です。家族心理学の意義と目的は、夫婦関係、結婚と家族の形成、親子関係、子離れ、少子化をめぐる問題などさまざまです。

【災害心理学】

災害に対する人間の心理的な反応、災害と人間の行動など、災害と人間心理の関係を研究します。災害は不可抗力的な出来事や状況であり、突発的なものだけでなく、長く続くものもあります。このような状況の出来事の心理を研究することで、二次災害を予防したり、パニックの防止を研究します。日本は世界各国から見ても防災の先進国ですが、災害者に対する精神面のケアは遅れています。災害時のパニック、非難行動、流言飛語(デマ)、災害体験によるトラウマ(心的外傷)の研究と成果が期待されている。

【青年心理学】

人体の性的変化とともに激動の青年期が始まります。青年心理学の定義どおり青年の心理を研究する学問です。多くの人が児童期は社会や親の価値観に従いましたが、青年期は何に価値を置くのか自問します。そして反抗、批判という過程を通って自分の価値観を自覚して自己実現するようになります。しかし自信があるわけではなく、不安も入り交じっているので、その複雑な心理を解明していく学問です。

【知覚心理学】

知覚の働きとは視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚の5感です。知覚心理学は外部からの情報を取り入れるプロセス、そのメカニズムの解明を目的とする学問です。明るさや色などどのように人は、ものが見えるのか?錯覚はどのようにして起こるのか?など医学や生理学や、計算幾何学なども必要になりますし、理解を深めていくためには人工知能、コンピュータの勉強も必要になってきます。人間の体と心のシステムの解明を研究する。

【健康心理学】

身体的な健康は、性格、価値観などの個人的な要因だけでなく、会社、学校、地域社会など集団からも影響を受けています。健康を心理学の視点から研究します。医学、看護学、保健学、体育学、栄養学などと密接な関係があります。研究の成果は、予防、治療、診断に採用され、人々の健康に直接関与します。

【動物心理学】

動物心理学には2つの柱があります。1つは、動物自体に視点を置く研究と、人間を考えるための手段として動物を研究する2つの分野に分かれます。もう1つは、動物の外顕的行動を分析する方向で、これは従来比較心理学と呼ばれていた領域です。もう1つが、生理学的、神経科学的な分野です。これらの4つの分野が動物心理学の領域です。 人間も動物として考え、人間と動物の共通する部分や異なる部分を研究します。

【スポーツ心理学】

スポーツ心理学は、スポーツをする人の技術を効果的に向上させ、能力を最大限に引き出す方法を研究する。指導者と選手の人間関係は心理的に大きく作用するからです。メンタルトレーニングなど、動機づけを高める方法、緊張状態をどのように高めたり、解いたりする方法、 心と体の生理学や改良改善の研究をします。

【環境心理学】

心の働きを仲立ちに環境と人間の関係、相互作用を体系的に探求するのがこの分野です。環境心理学は、人間と環境のよりよい関係の実現を目指して、意識と行動面から追及する。空間デザイン心理、パーソナルスペース、環境問題、環境犯罪心理学など心を取り巻く環境についての研究で成果を上げます。

【カウンセリング心理学】

対人援助技術であるカウンセリングの実践技法と理論体系、研究法(リサーチ法)を修得する為の学問分野であるが、知識習得の学術的な事柄だけでなくカウンセリング特有の『ラポール(相互的な信頼関係)に基づく人間関係』を体験的に学ぶことも重視される。カウンセリング心理学とは、究極的には、『人間の行動・人格・感情』を生み出す複雑な心理メカニズムを理解することを目的とした研究実践分野である。

心理学は人間・動物の行動(認知・情動・思考)を予測できる一般法則を定立することを目的とするが、カウンセリング心理学は人間の対人関係や精神状態を規定する一般法則を応用して『問題行動・問題状況・性格の偏り・対人関係の葛藤・心理的な苦悩』を解決(緩和)することを目的としている。

カウンセリングとは、クライエントを全人的に援助して効果的に変容させるための心理面接であり、クライエントの利益(目的・成長・改善)に貢献するための共感的(専門的)な人間関係である。

カウンセリング心理学は、『人間とは何か?』という壮大で深遠な哲学的な疑問に実用的に応える学問であり、『人格論(性格論)・技法論(治療論)・病理論(異常心理学)』の3大領域から成り立っている。臨床心理学の3大領域は、『心理アセスメント(心理テスト)・異常心理学(精神病理学)・心理療法(技法論)』である。
カウンセリング心理学も臨床心理学も、最近ではエビデンス(科学的根拠)を重視するため、心理統計学に基づく統計リサーチの研究が多く行われている。教育学分野におけるカウンセリングが専門領域として確立しているアメリカでは、カウンセリング・サイコロジスト(カウンセリング心理学者)といえばPh.D.(学術博士号)の博士号を持つ臨床心理学者を指し、カウンセラーといえば修士号を持つ臨床心理学者を指す。

日本では学位を基準としたカウンセラーの分類は存在しないが、修士号取得者を対象とした「臨床心理士」の民間資格がポピュラーな専門資格として認知されていて、カウンセラーというよりも心理臨床家としてのアイデンティティが強調されつつある。 日本においては、カウンセリングと心理療法は臨床心理学の研究範囲に包摂されているが、アメリカではカウンセリングはあくまで教育学の下位分類であり、心理療法(精神療法)は医学や心理学の下位分類となっている。つまり、この学問領域の分類は、カウンセリングは教育指導的な人間関係を主軸とした心理面接であり、心理療法は臨床的・治療的な専門技法を中心にした臨床面接であることを示唆しているのである。

教育学に分類されるカウンセリング心理学には、カウンセリングの理論と技法、カウンセリング・マインド、調査研究法、相談業務分類、異文化間カウンセリング、職業指導(産業心理学)、人格心理学などさまざまな分野が含まれている。その意味でカウンセリング心理学は、人文学領域における隣接諸分野を広範に包括する複合的な学問分野ということができる。

※公認心理師(国家資格)☆

わが国初のカウンセラー国家資格の誕生☆2015年9月9日の参議院本会議にて、「公認心理師」という国家資格を設ける法律が可決成立した。わが国初のカウンセラーの国家資格化という話。業界的には、重大ニュース。カウンセラー・心理職の国家資格化は、20年以上前から議論を繰り返しつつ実現していなかった。しかし、近年の労働者を巡るメンタルヘルス不全や、自殺という社会問題を背景に、ようやく待望の国家資格化を果たすことになった。また、犯罪の再犯率低下への対応として公認心理師がケアを行うことも検討されている。

公認心理師の資格は国家試験で認定し、受験資格は法律で定める大学を卒業の後、大学院の課程を終了した者や、別に定める一定の実務経験を持つ者に与えられる。今まで国家資格の存在しなかったカウンセラー業界全体の信頼性の向上に寄与するものと期待されている。第一回の国家試験は2018年9月9日に実施された。

受験者数 35,020人
合格者数 27,876人
合格率 79.6%

(データ:一般財団法人日本心理研修センター公表)

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公認心理師法(平成27年法律第68号)に基づき実施した第1回公認心理師試験(追加試験)の結果等は次のとおりです。
1 試験日 平成30 年12 月16 日(日)
2 試験地 北海道、東京都
3 合格発表日 平成31 年1 月31 日(木)14 時
4 合格発表
 厚生労働省及び一般財団法人日本心理研修センターにおいて合格者の受験番号を掲示するとともに、同センターホームページに合格者の受験番号を掲載する。
 なお、合格基準及び正答については別紙のとおりであり、当該資料についても併せて同センターホームページに掲載する。
 また、全受験者に対し総得点などを通知する。

5 受験者数 1,083 人
6 合格者数 698 人
7 合格率 64.5%

8 その他
(1)試験合格者には合格証書及び公認心理師登録申請書を郵送により交付する。
(2)不合格者には、その旨を通知する。
(3)平成30 年北海道胆振東部地震の被災状況を踏まえて、第1回公認心理師試験のうち、北海道の試験会場で実施予定であった試験を中止したため、平成30 年12 月16 日(日)に追加試験を実施した。

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★国家資格化により民間資格はどうなるか?

国家資格化の目的は、「公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与する」となっている。資格取得については、従来の臨床心理士同様、公認心理師になるにはハードルが高そう。。。当面は既得権を侵さないという意味で、既存の実務者への配慮がなされてる。

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受験資格を得るスタンダードな進路は、「大学卒+大学院修了」。一定以上の知的能力と財力が必要であり、社会人がキャリアチェンジとして選択するには難しい面があるため、既存の社会人受講生が大勢を占める。「産業カウンセラー」などは、 一定のニーズを保ちながら併存することになるかと考えられる。

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